日経新聞に日本ロジテック協同組合の経営破たんについての記事が掲載されました。
要旨
電力自由化が始まり、ガス会社、石油元売り、商社、通信など異業種が参入するなか、急成長してきた日本ロジテック協同組合(東京・中央)が4月、経営破綻しました。行政機関が取引先の大半を占め、一時は「新電力ビジネスの旗手」と目された企業に何があったのでしょうか。
日本ロジテックは2007年11月、関東ロジテック協同組合として発足しました。当初は食品の共同購入・販売事業や組合員向けに中国、ネパールなどから外国人実習生の斡旋などを行っていました。それが2000年の電気事業法改正による電力自由化、20055年4月の高圧需要家への規制緩和をきっかけに電力事業に進出しました。2010年7月に特定事業者の許可を取得し、電力共同購買事業を始めました。
電力事業に参入した2011年3月期の売上高はわずか1億円ほどです。このうち電力の小売りによる分は8000万円程度でした。それが2011年3月の東日本大震災による電力不足や電気料金値上げが追い風となり、一気に急成長しました。売上高は2012年3月期以降、4億円、82億円、319億円と拡大し、2015年3月期は556億円と5年間で640倍に達しました。
しかし、急成長のなかで肝心の電力供給が追いつきませんでした。そのため日本ロジテックは自前の発電所の保有を画策しました。
2012年に日本新電力(東京・中央)を設立し、那珂パワービレッジ(茨城県那珂市)、佐賀パワービレッジ(佐賀県伊万里市)を自社の発電所として稼働させる計画でした。しかし、用地買収の費用として日本ロジテックから数十億円に及ぶ資金が流れたが、発電設備を担当する関係先の一社が証券取引監視委員会による強制捜査を受けたため、一連の計画は頓挫してしまいました。
そこで日本卸電力取引所から買い付けることによって対応したものの、この取引は前払いのため、資金繰りの悪化につながったとみられています。また、一般電力事業者からの調達も増やしたが、こちらは「インバランスペナルティー」に直面しました。
国の変動範囲内(外)発電料金制度によって、新電力の事業会社は30分間同じ量の電力を供給できなかった場合、代わりに電力会社が不足分を供給することが定められています。安定供給が狙いで、不足分が3%までならば変動範囲内発電料金として比較的安い料金で収まります。しかし、3%を超えると最大4倍近い料金を払う必要があり、これがインバランスペナルティーです。日本ロジテック協同組合は、ずさんな電力供給計画のために、破綻直前のインバランスペナルティーが26億円にまで膨らんでいたようです。
2015年に入ると電力会社への支払いが滞るようになり、同年5月1日に預金口座が差し押さえられました。取引先の一つ、高知市はごみ焼却工場で発電した余剰電力の売電料金約1億8000万円が未払いとなったとして、支払い請求の訴えを裁判所に起こしました。同月13日、経済産業省は日本ロジテックを納付金未払いとして公表しました。経営不安が広がり、2016年4月1日スタートに向けた小売電力事業者の登録手続きが思うように進まなかったようです。金融機関による審査の見直し、電力会社の取引解約、自治に対する売上金と債務の相殺などによって経営はいっそう悪化しました。2016年2月24日に小売電気事業者登録を取り下げ、4月15日に東京地裁へ自己破産を申請しました。金融機関からの借入金約31億円に加え、電力会社への未払い金約71億円など総額163億円の大型倒産となりました。
この記事から、日本ロジテック協同組合は急速に拡大した需要規模に追いつくことができなかったようです。経営計画の見通しが甘かったと思います。また、どんどん契約が取れるのでイケイケでやっていたのかもしれません。
電力小売り自由化に参入した企業は300社近くあります。国の政策で一般消費者には電力の安定保証がされていますが、供給側は需要に見合った電力を確保しなければなりません。売れすぎて生産が間に合わないうれしい悲鳴はないのです。安定供給のため電力確保の計画は確実性がなければなりません。
今後も、新電力企業の破たんはあるのでしょうか。残念ながらないとは言えないと思います。保守的な考えですが、やはり自前の発電設備を持つ企業が新電力の中で生き残っていくのではないでしょうか。
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